メタプラネットがオプション市場でCash Secured Putを実施

株式会社メタプラネット(スタンダード市場:3350)は、2024年10月3日にビットコインのプットオプション取引を実施した。


オプション取引の内容

メタプラネットが行ったのは、Cash Secured Putと呼ばれるオプション取引だ(Target Buyingとも呼ばれる)。具体的には、プットオプションを売却すると共に、そのオプションが(相手側に)行使された場合に備えて、事前に証拠金として将来の支払いに必要な米ドル額(13,826,000ドル)を担保として差し入れておく取引である。

このオプション取引の行使期日は2024年12月27日、行使価格は62,000ドル、オプション金額は223BTC、オプション料は23.972BTCとなる。行使期日の12月27日時点でビットコインの実勢レートが62,000ドルを下回る場合には、当該オプションの買い手であるQCPキャピタルがプットオプションを行使してくるため、売り手側であるメタプラネットは、実勢相場よりも不利な62,000ドルで223BTCを購入しなければならない。Cash Secured Putは、この際に支払う米ドル額(223BTC×62,000ドル=13,826,000ドル)を予め証拠金として差し入れておく部分に特徴がある。

買い手側にとっては証拠金を事前に差し入れてもらっているため、安心・安全なオプション取引が可能となる(※オプション取引における最大のリスクは、買い手側が行使しても、売り手側の資金不足で契約が履行されないことであるため、Cash Secured Putはこうしたリスクを排除できるためマーケットメーカ側にとって有用とされる)。尚、メタプラネットは、この取引に必要な証拠金を第11回新株予約権の行使代金から捻出するとしている。



メタプラネットの損益構造

このオプション取引の損益図は以下の通り。仮に行使期日(12月27日)時点でBTCUSDの実勢相場が62,000ドル以上の場合、メタプラネットはオプション料をすべて得ることができるため、23.972BTC(=1,486,264ドル)が丸々収益として残る(※23.972BTCを62,000ドルで全額米ドルに交換したと仮定した場合の損益図)。


一方、行使期日時点の実勢相場が62,000ドルを下回る場合には、メタプラネットはQCPキャピタルから実勢相場より不利な62,000ドルでBTCを購入しなければならない。但し、当初受け取ったオプション料(23.972BTC=1,486,264ドル)があるため、62000ドルを下回ったからといってすぐに損失が発生するわけではない。

オプション料で得た収益分を考慮すると、このオプション取引における損益分岐点は55,335ドルまで引き下がる。もっとも、55,335ドルを下回ると損失が発生するが、メタプラネットは元々ビットコインロングを積み増したいという覚悟を持ってこの取引に臨んでいるため、短期トレーダーが陥りがちな心境とは異なる点に留意が必要だろう。


まとめ

Cash Secured Putは、将来的に特定の価格でビットコインを購入したい投資家にとって有効な戦略である。もしオプションが行使されなければ、オプション料を全額受け取ることができるため、受け取ったオプション料を用いて新たなビットコイン獲得に充てることができる。また、オプションが行使された場合でも、あらかじめ設定した価格でビットコインを購入できるため、計画的な投資であったと自分に言い聞かせて心の動揺を抑えることができる。

オプション市場では、カバードコール同様、Cash Secured Putが多く利用されている。証拠金を差し入れることができるような資金力のある投資家にとっては、Cash Secured Putは非常に有効なオプション戦略となり得る。オプション料を獲得しつつ、希望する購入価格に近い水準でビットコインを取得できるため、リスクを抑えつつ計画的な資産運用/長期保有戦略が実現できる。

オプション取引は、リスクとリターンのバランスを取るための重要なツールであり、適切な理解とリスク管理を伴えば、暗号資産市場で多くのメリットを享受できる。投資家は、自分自身の投資戦略に合わせてオプションを活用することで、より柔軟かつ効果的なポートフォリオ構築を目指すことができるだろう。

尚、私達のようなオプショントレーダーにとって重要なのは、メタプラネットが有するポジションではなく、その相手方に立っているQCPキャピタル(マーケットメーカー側)のポジションだ。メタプラネットのCash Secured Putを引き受けたことで、QCPキャピタルは62000ドルを頂点に巨大なガンマロングを有していると推察される。QCPキャピタルがこのポジションをデルタヘッジのみで凌いでいくのか?、カレンダースプレッドを組んでSell/Buyのようなポジションを作るのか?、両ウィングを売却してストラングルショートのポジションを作るのか?など、色々な仮説を巡らせることが相場観を形成する上で重要となる。この辺りについては、また別の機会に説明したい。

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