Coinbase、EU非準拠のステーブルコインを12月に上場廃止へ:MiCA規制対応に向けた動き

米暗号資産交換業大手のコインベース(Coinbase)は、2024年12月末までに欧州経済地域(EEA)の暗号資産取引所から、EUの規制に準拠しないステーブルコインをすべて上場廃止する方針を発表した。この決定は、テザー社が発行するUSDTなどに影響を与える可能性がある。


EU暗号資産市場規則MiCAの施行、欧州の暗号資産市場に影響
EUが制定した暗号資産市場規則「MiCA」(Markets in Crypto-Assets)は2023年に成立し、2024年12月末に完全施行される。この規制は、ステーブルコイン発行者に対して透明性や流動性、消費者保護の厳格な基準を課すもので、EU内での許認可取得を義務化している。これにより、MiCAに準拠しないステーブルコインは市場から排除されるリスクを抱えることになる。


コインベースの対応とテザーへの影響
コインベースは、2024年12月30日までにMiCAに準拠しないステーブルコインの取扱いを停止する予定であり、ユーザーに対してMiCA準拠のステーブルコインへの移行を促す方針だ。具体的には、米サークル社が発行する米ドル連動のUSDCや、ユーロ連動のEURCなどが候補として提示される見込みである。

一方、テザー社が発行するUSDTは、依然としてEU内での認可を取得しておらず、今後の取引が制限される可能性が高い。現在、テザー社は約1,200億ドル規模のUSDTを発行しており、市場全体の約7割を占めている。しかし、欧州市場へのアクセスが制限されることで、デザーの市場シェアに変動が生じる可能性があり、今後の市場競争力にどのような影響が出るかが注目される。


ステーブルコイン市場の今後の動向
ステーブルコインは、デジタル資産市場における重要な存在として急成長している。米決済大手ペイパル(PayPal)をはじめ、他の大手金融機関もステーブルコイン導入を進めている。ステーブルコインは、Web3のデジタル資産市場と従来の金融市場をつなぐ役割を果たしており、その透明性と安定性が市場の発展を支えている。

最近では、フィンテック企業のロビンフッド(Robinhood Markets Inc.)、レボリュート(Revolut Ltd.)、ビットゴー(BitGo)が、テザー社の優位性に挑むため、独自のステーブルコインの発行を検討している。ステーブルコイン市場は今後、さらに競争が激化することが予想されるが、MiCAのような規制対応が市場参入の障壁を高めている。


テザー社の財務状況と規制対応
注目のテザー社は、2024年上半期の利益が52億ドル(7,696億円相当。1ドル=148円換算)という驚異的な記録を出した。従業員数が100名程度の同社が、ゴールドマンサックスと比較される規模の収益を上げている。また、テザー社は約976億ドル相当の米国債を保有しており、その額はドイツやメキシコの保有額を上回る規模である(*下表は参考情報として、2024年4月時点の米財務省データおよび、2024年6月時点のテザー社の公表値に基づき作成。データ取得時期に差があるため、ご留意されたい)。

ソース:米財務省データをCoinCollege∛作成


テザー社は、欧州の規制環境の変化に対応するため、欧州市場向けに設計された新しい技術ソリューションを導入する予定であり、今回のコインベースの報道に対して、テザー社の広報担当者は「当社は技術ベースの解決策に取り組んでいる」という以前の声明を繰り返した。

しかし、OKXやBitstamp、Upholdなどの暗号資産取引所は、MiCAの全面施行に先立ち、テザー社のステーブルコインへのアクセスを制限している状況だ。

多くのDeFiプロトコルやレンディングプラットフォームで利用されるUSDTだが、今後、テザー社の市場シェアがどう変動するか、また他のステーブルコイン発行者がどのように市場に参入するか、各社のビジネスモデルが注目される。

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