WisdomTreeのデジタルMMF、自社発行Visaデビットカードの決済利用に対応


トークン化されたMMFの新たなユースケース
ビットコインETFの発行者としても知られる米WisdomTree(ウィズダムツリー)は9日、デジタルマネーマーケットファンド「WTGXX」を、WisdomTree Prime Visa®デビットカードの支払い原資として利用できる機能を発表した。この「Earn-Until-You-Spend」(使うまで増やす)機能により、同ファンドの投資家は、MMFの利回りを享受しながら日常の決済を行えるようになる。これは、伝統的金融機関がトークン化された資産の実用性を大きく広げる一歩といえる。

従来、デビットカードの決済は、低い利回りまたは無利息の当座預金からの引き落としが一般的だった。しかし、WisdomTree Primeのユーザーはアプリ内で米国債で運用されるMMFの残高を選択するだけで、デビットカードの支払いに利用できる。WTGXXの投資家は、支払いに充てるために売却するまで、7-day yieldで利回りを得られる(10月7日時点のパフォーマンスデータ上、「WTGXX」の7-day yieldは4.60%)。

日本のMRFとの比較

日本において、現金を国債で運用するという観点では、証券口座でのマネー・リザーブ・ファンド(MRF)を活用した資産運用が馴染み深い。MRFは証券総合取引口座専用の投資信託で、口座に入金後、自動的にMRFを買い付け、国内外の短期公社債で運用される。

WisdomTreeの取り組みが革新的であるのは、(証券口座を介さずに)利回りを得ながら資産を決済に利用できる点であろう。MRFの場合、決済用に現金化するためには証券口座から銀行口座に資金を移動させる必要があり、一定の時間がかかり得る。一方、今回の新機能では、投資家が運用資産を直接デビットカードの支払いに接続できるため、資産の流動性と利回りの両立させた運用が可能となっている。

WisdomTreeのCEOであるJonathan Steinberg氏は、トークン化された資産の「ユーザビリティ(使いやすさ)」を投資家に提供することが重要だと以前から強調しており、今回のデビットカードとの連携はその理念に即した取り組みである。


Wisdom TreeのデジタルMMF「WTGXX」

WTGXXは米国の1940年投資会社法に基づくMMFをトークン化したもので、ステラやイーサリアムのブロックチェーン上で発行されている。米サークル社の発行する米ドル連動のステーブルコインUSDCを用いた購入にも対応しているが、技術的には法定通貨である米ドルに一旦交換するプロセスを経るため、Web3との完全なシームレス性は確保されていない。

トークン化された資産運用の将来像と国内での展開可能性

日本でもセキュリティトークンの発行は拡大しており、2024年7月には累積発行額が1,400億円に達したとされている。しかし、その多くは不動産を裏付けとするもので、金利の高い米国市場とは異なる性質を持つ。特に、リスクフリーな国債を裏付けとしたトークンは、低金利の日本市場においてはまだ普及が難しい状況と考えられる。

とはいえ、WisdomTreeのように、資産の利回りを享受しつつ、同時に流動的な支払いを可能にするサービスは、国内投資家の利便性を大幅に向上させる可能性がある。こうした海外のユースケースが増えることで、日本市場においても市場参加者らが学びを得る機会が増え、新しい金融商品が登場する土壌が整いつつある。今後、日本市場での展開にも期待がかかる。

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