昨年急速に注目を集め、ドル建てステーブルコイン市場でトップ10入りを果たしたUsual Moneyの「Usual USD(USD0)」が、ステーキングトークン「USD0++」の価格下落を受けて、USD0の供給量減少やガバナンストークン「USUAL」の価格低下といった課題に直面しています。
「USD0」と「USD0++」の仕組み
ステーブルコイン:USD0
- 米国債を担保とするドル建てステーブルコインで、原則として1 USD0=1ドルの価格に連動するよう設計されています。
- USDTやUSDCのように裏付け資産の運用益を発行企業が得るモデルとは異なり、利益をコミュニティに還元する設計が特徴です。このユニークな仕組みにより、ステーブルコイン市場で急速に成長し、時価総額はPayPal USDを上回る7位に位置しています。
ステーキングトークン:USD0++
- ゼロクーポン債に似た性質
USD0をステーキングすることで発行されるトークンで、4年間のロックアップ期間を経て1 USD0++=1 USD0で償還可能です。 - 利回りの提供
ロックアップ期間中、保有者にはガバナンストークン「USUAL」を通じて日々の利回りが提供されます。 - 理論価値
4年間の年利4%を前提にすると、現在の理論価値は約$0.855と算出されます。 - しかし、以前はロックアップ期間でも1 USD0++=1 USD0での早期引き出しが可能になっていました。
- フロア価格の導入
最近のプロトコル変更により、引き出し時にフロア価格($0.87 USD0)が適用されるようになりました。このルール変更が一部の投資家から批判を招いています。
USD0++価格下落の背景
償還ポリシー変更とその影響
- 変更前:1 USD0++を1 USD0で自由に引き出せる「1:1償還」が可能でした。
- 変更後:フロア価格($0.87 USD0)が導入され、途中引き出し時に元本割れが生じる可能性がある設計に変更されました。この変更が市場の動揺を引き起こしました。
価格への影響
- 1月10日、USD0++の価格は一時$0.91台まで下落し、1月14日現在は$0.94付近まで回復しましたが、依然として1ドルには達していません。
- 同時に、USD0の供給量も減少し、時価総額は2億ドル以上減少して約15億ドルに縮小しています。


コミュニティーの反応
批判意見
- コミュニティの一部からは、突然の変更により「事前の十分な告知がなかった」との批判や、「USD0++を1ドルで購入したにもかかわらず、0.87ドルでしか引き出せなくなり、資産価値が13%蒸発した」との指摘があがりました。
擁護意見
- 一部のユーザーは「USD0++は4年間保有するゼロクーポン債に似た商品であり、フロア価格の導入はプロトコルの安定性を高める」と評価しています。
- また、USD0自体は米国債で裏付けられ、引き続き安定性を維持している点を強調する声もあります。
Usual社の対応
Usual社は11日、ステーブルコインUSD0++が1米ドルから大きく乖離したことを受け、コミュニティの反応を真摯に受け止め、エコシステムの安定化とユーザーの懸念に対応するための一連の措置を発表しました。
1. レベニュー・スイッチ機能の導入
1月13日より、プロトコルが実世界資産や運営から得る収益(月間最大$500万)をステーキングしたユーザーに分配する「レベニュー・スイッチ」機能を開始しました。この収益は週に一度、USD0の形でUSUALx保有者に分配されます。
2. 「1:1」の早期償還機能の提供
来週までにUSD0++を1 USD0で償還できる「1:1早期償還」機能を導入予定です。ただし、償還時には累積報酬の一部を放棄する必要があります。
結論
今回のUSD0++価格下落と償還ポリシー変更は、ステーブルコイン市場における「安定性」と「収益性」のバランスの重要性を浮き彫りにしました。長期的には、プロトコルの透明性やコミュニティとの信頼関係の強化が市場回復の鍵となるでしょう。加えて、Usual社の迅速な対応は、プロジェクトの信頼性向上に寄与する可能性があります。他のプロトコルにとっても、重要な教訓となるでしょう。
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