2024年11月13日、メタプラネットは2024年第3四半期の決算を発表した。営業損失や経常損失が依然として赤字であったにもかかわらず、株価は上昇基調を維持している。この株価の上昇は、同社が採用しているビットコイン保有戦略に対する市場の期待が反映された結果であると考えられる。
現在、メタプラネットは1,142BTC(1BTC=15,000,000円換算で、約171億円相当)を保有しており、企業としてのビットコイン保有量は世界のトップ20に入る規模である。ビットコイン価格の上昇に伴い、その評価額は増加しており、これが株価急上昇の大きな要因となっている。

ビットコイン購入の資金源
メタプラネットはビットコイン購入資金を普通社債と新株予約権(ワラント)によって調達している。普通社債は負債として計上されるため、株式数の増加は生じない。一方、ワラントによる資金調達では、新たに株式が発行されるため、株主価値が希薄化するリスクが生じる可能性がある。ワラント発行は短期的に株価に圧力をかけることが予想されるが、同社のビットコイン保有戦略を強化するための重要な手段として位置付けられている。
また、メタプラネットは新株予約権の発行にあたり、無償割当を実施している。この無償割当によって既存株主は新たに発行される株式を無償で受け取ることができるため、持ち株比率が維持される。この仕組みにより株主価値の希薄化リスクは軽減されるものの、全体の株式数が増加することで1株当たりの価値が下がるため、リスクには引き続き留意が必要だ。
ビットコインを直接保有する場合と比べたメリット
国内投資家にとって、メタプラネット株を通じてビットコインに間接的に投資するメリットは、税制面の優位性にあると言える。直接ビットコインを保有し売却する場合、個人投資家のキャピタルゲインには最高55%の税率が課されるのに対し、メタプラネット株を通じた投資では、分離課税が適用され、税率は20%となるため、ビットコインへの直接投資より税負担を軽減できる可能性がある。
ただし、ビットコイン相場とメタプラネットの株価が常に相関するわけではない点には注意が必要である。メタプラネット株は、ビットコインの価格変動以外にも、同社の事業活動や市場全体の動向など、さまざまな要因に影響を受ける。そのため、投資判断を行う際には、自身のリスク許容度や投資目的を踏まえた慎重な見極めが求められる。
株主優待制度の導入
2024年11月18日、メタプラネットは新たに株主優待制度を導入することを発表した。具体的な優待内容としては、SBI VCトレードでのビットコイン抽選プレゼントや、ビットコインカンファレンス入場割引券、ビットコインマガジンストア割引券、ホテルロイヤルオーク五反田(メタプラネット社のホテル)の宿泊料金割引などが提供される。無配当の中で株主の満足度を高める効果が期待されるが、大株主であるSBI証券が関与していることも、優待内容に影響を与えている可能性がある。

本業での赤字縮小
メタプラネットの本業にも改善が見られる。2024年第3四半期の決算では、ホテルロイヤルオーク五反田の事業改善(客室の改装や新たな集客施策)が進み、本業での赤字縮小が確認された。今後、ビットコイン関連設備投資やホテル事業の付加価値向上を通じて、収益基盤としての成長が期待されている。
まとめ:ビットコイン保有戦略と株価上昇の背景
メタプラネットは、ビットコイン保有戦略を通じて株価上昇を実現し、ビットコイン市場の成長に伴い企業価値を増加させている。しかし、将来的なワラント発行による株式数の増加と、それに伴う希薄化リスクには留意したい。次回は、世界最大のビットコイン保有戦略を採用しているMicrostrategyの事例を見てみたい。
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