米国暗号資産市場の次なる一手:規制緩和と成長戦略で読む6つのトレンド

米国大統領選挙後、暗号資産市場は新たな局面を迎えている。ビットコインの価格は今週、過去最高の93,500ドルを一時記録し、市場の注目を集めている。この動きの背景には、次期政権がもたらす政策の変化や規制の進展への期待がある。

こうした中、JPモルガンのアナリストは、次期政権下で予想される暗号資産市場の6つの重要な動向を指摘している。また、同社のCEOであるジェイミー・ダイモン氏に関する話題も注目される。過去にビットコインに対して批判的な見解を示し、規制強化を支持してきたダイモン氏が、トランプ次期政権での入閣を否定されたことは、暗号資産市場にとって象徴的な出来事といえるだろう。

https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/112836501862027675



1. 暗号資産ETFの拡大可能性


暗号資産ETF(上場投資信託)は、個人投資家が暗号資産に容易にアクセスできる手段として成長を続けている。現在、ビットコインやイーサリアムを対象としたETFが米国市場に出ているが、次なるステップとしてリップル(XRP)やソラナ(Solana)などを対象とする現物ETFの登場が期待されている。

しかし、SEC(米国証券取引委員会)の未登録証券を巡る訴訟問題や、ビットコインと同様にこれら通貨の先物型ETFの承認が先行条件になると見られており、実現には時間を要するとされる。一方で、これが承認されれば、暗号資産市場の信頼性が向上し、新たな投資家層の参入が期待される。

2. 規制明確化で進むベンチャー投資とM&A


規制の明確化は、ベンチャーキャピタル(VC)や暗号資産スタートアップ企業にとって新たな成長機会を生む。特に、キャピタルゲイン税の引き上げ回避や独占禁止法の運用緩和が進めば、大企業による買収が増加し、VCの出口戦略(投資回収)が増えると期待される。これにより、暗号資産業界への資金流入が加速する可能性が高い。

また、トークン発行やアセットのトークン化、DAO(分散型自律組織)の普及に向けた規制の整備が進み、業界の発展が加速する可能性がある。ワイオミング州が導入したDAO法は、その分散性を維持しつつ法的地位を付与する仕組みとして注目されている。他州でも同様の法制度が整備されれば、さらなるイノベーションを生む可能性が高い。

3. ビットコインを国家準備資産とする可能性は低い


国で提案されている2024年ビットコイン法案は、ビットコインを戦略的準備資産として位置づけ、総供給量の約5%を購入することを目指している。この法案は最も注目される政策提案の一つだが、アナリストらは成立の可能性を低いと見ている。仮に成立すれば、ビットコインの国際的地位を大きく押し上げる可能性があるものの、現時点ではその実現性は依然として不透明である。

4. 暗号資産関連法案の進展:グローバルな規制協調の必要性


停滞していた暗号資産関連法案が、進展を見せる兆しがある。その中でも特に注目されるのは以下の3法案である:

21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法(FIT21)
共和党主導の法案で、米商品先物取引委員会(CFTC)を主要な暗号資産規制当局に昇格させ、SECの監督権限との棲み分けを明確にすることを目的としている。

ステーブルコイン法案
認可された決済用ステーブルコインの枠組みを確立し、証券やコモディティとの線引きを明確化することを目的とした法案。この法案により、銀行や決済プロバイダーといった伝統的な金融機関が、ステーブルコインの発行やサービス提供を行いやすくなると考えられている。一方で、テザー(USDT)のような米国外のステーブルコイン発行者に対する具体的な対応策が不明確であり、その法的枠組みがどれほど有効かには疑問も残る。

CBDC監視防止州法
米国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発を停止し、民間ステーブルコインの普及を支援する内容の法案。この法案は、CBDCが進展する前に民間のイニシアティブを支持する方向に舵を切るものであり、デジタル通貨の競争を促進する可能性がある。

5. SECとの協調的なアプローチへの転換


SECが進める強制執行型の規制が緩和され、協調型アプローチへと転換する兆しが見られる。例えば、米コインベース(Coinbase)への訴訟や、分散型取引所のユニスワップ(Uniswap)への未登録証券取引に関する規制通知の見直しが進めば、業界全体の運営安定性が高まり、長期的な発展が期待できるだろう。

6. 銀行による暗号資産のカストディ参入


現在、SEC職員会計公報第121号(SAB 121)により、暗号資産のカストディを行う機関は、暗号資産の保有額を貸借対照表上の負債として記録する必要があり、事実上、銀行が暗号資産をカストディすることが制限されている。BNYメロンは免除を受けているが、この規定が廃止されれば、そうした個別の承認が不要となり、銀行がより自由にデジタル資産に関与できるようになり、業界全体の成長を後押しするとされる。

さらに、FDIC(連邦預金保険公社)やOCC(通貨監督庁)のリーダー交代が進むことで、銀行の参入が加速する可能性がある。

まとめ


米国で示された6つのトレンドは、日本を含むグローバル市場にも大きな影響を与える。日本市場では先行的に規制整備が進む中、ビットコインETFなど新たな商品の投入はこれからの課題といえる。一方で、米国の動向を参考にした柔軟かつ積極的な対応を進めることで、日本も暗号資産市場の成長をリードするポテンシャルを秘めている。投資家のリテラシー向上とスタートアップ支援を強化することで、新しい市場機会を切り開くことが期待される。


コメント

タイトルとURLをコピーしました