12月17日、テザー社は欧州のステーブルコイン発行企業StablRへの投資を発表した。MiCA規制の施行が目前に迫る中、ヨーロッパのステーブルコイン市場は急速に変化している。テザー社は直接的なMiCA(Markets in Crypto-Assets)対応にこだわらず、他社プロジェクトへの投資を通じて欧州市場での存在感を強化する戦略を選んだ。StablRへの投資は、その象徴的な一手といえる。
欧州ステーブルコイン市場の現状
欧州では、MiCA規制が2024年12月30日に本格的に施行される予定だ。これに伴い、ステーブルコイン発行者はAML(アンチ・マネーロンダリング)やKYC(顧客確認)、リスク管理といった厳格なコンプライアンス要件を満たす必要がある。
テザー社のCEOであるパオロ・アルドイーノ氏は、MiCA規制が求める「準備金の60%を銀行預金で保有」という要件に対し、銀行依存のリスクを指摘。先月27日には、同社が発行するユーロ連動型ステーブルコインEURTのサポート終了(2025年11月27日まで)を発表した。
一方、規制の明確化により、欧州ステーブルコイン市場は成長を続けており、その時価総額は約4億ドル規模に到達。流動性の向上や取引コストの削減、さらにクロスボーダー決済の効率化といった実利的な需要が、この急成長を後押ししている。
テザー社とStablRの提携強化
StablRは、MiCAに準拠したEURR(ユーロ連動)およびUSDR(米ドル連動)のステーブルコインを提供している。これらはERC-20で、Solana互換トークンとして発行されている。さらに、StablRはマルタ金融サービス局(MFSA)から電子マネー機関(EMI)ライセンスを取得済みで、厳格なコンプライアンス基準をクリアしている。
特筆すべきは、StablRがテザー社の新プラットフォーム「Hadron by Tether」を活用する点だ。Hadronは、
- 株式、債券、コモディティ、ステーブルコインのトークン発行プロセスを簡便化
- SaaS型インフラでエンドツーエンドのトークン管理を実現
- KYC/AML対応、リスク管理、セカンダリーマーケット監視機能を搭載
これにより、StablRは多様なネットワークへの対応や流動性確保をさらに進め、ユーザーへの利便性を高めることが期待される。
まとめ:欧州市場を見据えたテザーの新たな布石
StablRは、テザー社のサポートを受けることで、自社の規制対応力とテザー社の技術基盤を融合させ、競争力を高めようとしている。テザー社にとってこの動きは、欧州市場への影響力拡大を狙った戦略的な布石であり、StablRにとっては成長加速のための強力な後ろ盾となる。両社にとってメリットの大きい、まさにWin-Winの関係だと言えよう。
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