ロイター通信は9日、米国の暗号資産業界が2024年の議会選挙で、支持候補者を支援するために約1億1,900万ドルを投入したと報じた。大規模な支援を行った背景には、暗号資産に友好的な法整備を進め、業界の成長を後押しする狙いがあった。主要企業にはCoinbaseやRippleが名を連ね、業界が支援した候補者の多くが火曜日に当選を果たしたことで、今後の議会において暗号資産推進のための立法がさらに進展する可能性が高まっている。
スーパーPACによる支援とその意義
今回の選挙では、スーパーPAC(政治活動委員会)と呼ばれる政治団体が影響力を拡大した。スーパーPACの政治献金の集金・支出に上限がないため、選挙費用の高騰や富裕層の政治介入を招いている。特に「Fairshake」と呼ばれるスーパーPACは4,000万ドル以上を費やし、クリプト支持候補者の選挙戦を支援したとされる(出典:OpenSecretsおよび米連邦選挙委員会)。業界の多額の支援により、当選した候補者が今後、暗号資産に対する法整備を進める可能性が高まっている。
注目された選挙区と支援結果
暗号資産業界は、特定の選挙区に集中して資金を投入した。主な選挙結果とその影響は以下のとおり。
- オハイオ州上院議員選挙
- 候補者: (共和党) Bernie Moreno vs. (現職) Sherrod Brown(民主党)
- 支援額: 4,020万ドル(約61億円、1ドル152円換算)
現職の上院銀行委員会委員長であるSherrod Brown氏の落選を目指し、史上最も高額な争奪戦となった選挙区。結果的にMoreno氏が勝利し、暗号資産に厳しかった現職のBrown氏を破った。Moreno氏はブロックチェーン事業の経験を有し、議会において暗号資産の規制改革を推進する意向を表明している。
- ミシガン州上院議員選挙
- 候補者: (共和党) Mike Rogers vs. (民主党) Elissa Slotkin
- 支援額: 1,000万ドル(約15億円)
暗号資産法整備に賛成する姿勢を示してきたSlotkin氏が僅差で勝利。業界の意向に沿った法整備が進むことが期待されている。
- アリゾナ州上院議員選挙
- 候補者: (共和党) Kari Lake vs. (民主党) Ruben Gallego
- 支援額: 1,000万ドル(約15億円)
Gallego氏は、暗号資産に関連する法案に賛成票を投じてきた。この選挙区は未確定ながらGallego氏が僅差で優勢の状況。
- マサチューセッツ州上院議員選挙
- 候補者: (共和党) John Deaton vs. (現職) Elizabeth Warren(民主党)
- 支援額: 420万ドル(約6.4億円)
暗号資産業界は、Elizabeth Warren氏に対抗するため、マサチューセッツ州上院議員候補のJohn Deaton氏に420万ドルを投じたが、結果的にDeaton氏は敗北し、Warren氏が再戦した。オハイオ州でSherrod Brown氏が落選したことで、Warren氏が上院銀行委員会において民主党の主要メンバーとなる可能性が高まっている。Warren氏は暗号資産業界と度々衝突しており、厳格なマネーロンダリング防止基準を暗号資産にも適用すべきだと主張している。今後も厳しい規制を求める姿勢を貫くと予測される。
- ウェストバージニア州上院議員選挙
- 候補者: (共和党) Jim Justice vs. (民主党) Glenn Elliott
- 支援額: 300万ドル(約4.6億円)
Justice氏が当選し、暗号資産の成長促進を表明している。
- インディアナ州上院議員選挙候補者
- 候補者: (共和党) Jim Banks vs. (民主党) Valerie McCray
- 支援額: 300万ドル(約4.6億円)
- 議会で業界の支援を受けた法案を推進してきたBanks氏が当選。今後、業界の意向に沿った暗号資産規制の整備が期待されている。
- カリフォルニア州第45選挙区
- 候補者: (共和党) Michelle Steel(現職) vs. (民主党) Derek Tran
- 支援額: 280万ドル(約4.3億円)
Steel氏は暗号資産法整備に賛成する立場をとり、業界からの支援を受け再選を目指している。この選挙区は未確定ながらSteel氏が僅差で優勢の状況。
- アラバマ州第2選挙区
- 候補者: (共和党) Caroleene Dobson vs. (民主党) Shomari Figures
- 支援額: 260万ドル(約4億円)
暗号資産を支持する立場を示しているFigures氏が当選。民主党に対しても暗号資産を支援するよう求めており、イノベーションを促進するための政策を掲げている。
- ノースカロライナ州第1選挙区
- 候補者: (共和党) Laurie Buckhout vs. (現職) Donald Davis(民主党)
- 支援額: 230万ドル(約3.5億円)
議会で暗号資産業界が支持する法案を推進してきたDavis氏が当選。今後も業界の支援を受けた法整備に取り組むことが見込まれている。
- コロラド州第8選挙区
- 候補者: (共和党) Gabe Evans vs. (現職) Yadira Caraveo(民主党)
- 支援額: 230万ドル(約3.5億円)
Caraveo氏は暗号資産関連の法整備に積極的で、暗号資産業界の支援を受け当選を目指している。この選挙区は未確定ながらCaraveo氏が僅差で劣勢の状況。
今後の展望と期待される法整備
暗号資産に賛成する候補者が多く当選したことで、業界が求める規制の枠組みの整備が進展することが期待される。特に、米証券取引委員会(SEC)との協議が今後の焦点となる。一方で、エリザベス・ウォーレン氏をはじめ、厳しい規制を求める議員もおり、特にマネーロンダリング防止といった観点からの規制強化が引き続き議論される見込みだ。こうした異なる立場の意見がバランスを保つことで、暗号資産市場が活性化しつつも、安全な環境が推進されることに期待が寄せられる。
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